健康経営の取り組み方法!認定される条件や手順・企業の導入事例を解説

健康経営への取り組みは、従業員の健康を戦略的に支援し、企業の生産性やイメージ向上にもつながる重要な経営施策です。多くの企業で働き方改革や人材確保が課題となる中、大企業だけでなく、中小企業においても健康経営に取り組む企業が増えてきています。

とはいえ、
「どこから手をつければ良いのかわからない」
「何をすれば“健康経営”といえるのか分からない」
という声も実際によく耳にします。

特に、初めて健康経営を行う企業の場合、取り組みの全体像が見えずに戸惑うこともあるでしょう。

この記事では、健康経営と認定される条件や主な取り組み内容、手順を解説します。企業の導入例も含めてお伝えするので、健康経営への取り組みを考えている方はぜひ参考にしてみてください。

健康経営の認定条件

チェックリスト

経済産業省では、優れた健康経営を行う企業の見える化を目指して、平成28年度から健康経営優良法人認定制度を設けています。

評価基準は、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5つを軸に定められていて、各項目の評価値と重要度から総合評価をします。認定されることで、社会的評価を受けられるようになるため、健康経営に取り組む際は認定条件となる評価項目を把握しておくと良いです。

認定条件となる主な評価項目は以下のとおりです。

健康経営度調査の評価項目

  1. 組織体制
    ◇経営層が参加する組織体制の構築
    ◇産業医や保健師など専門職との連携体制の構築
  2. 制度・施策実行
    計画の立案:
     健康課題の把握・具体的な目標設定

    ◇土台づくり:
     ヘルスリテラシー向上研修の実施
     ワークライフバランスや病気と仕事の両立に必要な社内ルールの整備

    ◇施策の実施:
     食事・運動習慣の改善
     感染症予防、メンタルヘルス対策、喫煙対策
     女性特有の健康課題への対応
  3. 評価・改善
    ◇健康経営の効果検証・施策改善の詳細
  4. 法令遵守・リスクマネジメント
    ◇定期検診やストレスチェックの実施
    ◇労働基準法、労働安全衛生法の遵守

参照:Action!健康経営 https://kenko-keiei.jp/about/

健康経営の主な取り組み内容

握手する様子

健康経営に取り組む際は、職場環境を過ごしやすい空間に変えたり、従業員に対して健康意識を高めるためのプログラムを用意したりすることが大切です。職場環境と従業員それぞれの主な取り組み内容を見てみましょう。

職場環境に対する取り組み

職場環境への主な取り組みとしては、ワークライフバランスを重視した柔軟な勤務制度の導入、受動喫煙防止に向けた敷地内全面禁煙の実施、快適性を重視したオフィスづくりがあげられます。
また、メンタルヘルス対策として、定期的なストレスチェックを行ったり相談窓口を設置したりする取り組みもあります。このように、職場では問題発見と対処に向けた仕組みを整え、ストレスなく安心して働ける環境を作ることが大切です。

従業員に対する取り組み

従業員に対する主な取り組みでは、運動機会の確保を目的とした社内運動会の開催、人間ドックやがん検診などの各種検診の費用補助、従業員食堂の導入による食生活改善などがあげられます。

また、残業が減るように新たな管理システムを導入したり、子育てや介護、病気治療との両立支援をサポートしたりと仕事への向き合い方を変えていくことも大切です。従業員に対しては、自分らしい働き方ができる環境の構築や、業務負担の軽減に焦点をあてて取り組みを考えると良いです。

健康経営の取り組み手順

メモを取る様子

ここでは、健康経営の取り組み手順を一つずつ解説します。手順に沿って段階的に進めると、全体像が可視化されて制度として定着しやすくなるので、導入前に健康経営の詳しい流れを理解しておきましょう。

①目的設定:取り組み背景や目的の明確化

健康経営を開始するにあたり、取り組みの背景や目的を明確にしましょう。目的を設定しておかないと、社内の体制づくりが進まなくなったり施策に一貫性がなくなったりして、取り組み自体が失敗する可能性が高まります。

また、実際に始める際は社内外への情報開示が求められるので、「なぜ健康経営に取り組むのか」「健康経営によって何を期待しているのか」という根本的な背景を振り返り、納得のいく理由を導き出すと良いです。

②健康宣言:社内外に健康経営に取り組むことを宣言

目的設定ができたら、社内外に健康経営に取り組むことを社内外へ宣言します。健康宣言は、健康経営優良法人認定を受ける際の必須条件となるので忘れずに行いましょう。加入している健康保険組合や、全国健康保険協会が行う「健康宣言事業」を活用することとなります。健康宣言事業とは、企業が取り組む健康経営の内容を明文化し、発信のサポートをするものです。

参照:全国健康保険協会「健康宣言」|全国健康保険協https://www.kyoukaikenpo.or.jp/pickup/healthinesscorp/

③体制構築:組織体制の整備

宣言後は、健康経営を実現するための組織体制を整備します。体制を整える際は、担当部署や健康経営担当者を決め、経営層を責任者に抜擢すると良いです。トップが関与することで、企業全体で取り組むべき課題であると従業員に意識づけられて、組織全体のモチベーション向上が期待できます。

また、効果を高めるためには専門家との連携も大切です。連携体制は健康経営優良法人認定にも影響するので、産業医や保健師や健康経営エキスパートアドバイザーに協力を仰いで施策立案を進めていきましょう。

④現状分析:健康課題を調査・分析

組織体制が整ったら、従業員アンケートや健康診断、ストレスチェックなどを通して、社内の健康課題を調査・分析します。

代表的な健康課題としては以下があげられます。

  • 健康診断の受診率が低い
  • 健康診断でメタボリックシンドロームと診断された従業員が多い
  • ストレスを強く感じている従業員が目立つ部署がある
  • メンタル不調者や休職者が増えている
  • 離職者数が増加している
  • 残業や休日出勤の割合が高い

課題を洗い出した後は、最初に設定した目標を意識しながら課題ごとの施策を考えていきましょう。

⑤実行:計画の作成・実行

現状分析をもとに、運動促進のための社内ウォーキングキャンペーン、メンタルヘルス相談窓口の設置、禁煙プログラムの導入など具体的な施策を作成して実行に移します。

実行する際は、課題解決に向けた取り組みを一斉に行うのではなく、優先順位をつけて段階的に進めていくと良いです。また、課題ごとに実施時期や担当者を設置し、ひとつずつ具体化すると計画が進めやすくなります。

⑥評価と改善:健康経営の取り組みの評価

施策を実施したら、進捗状況や目標達成度を定期的に評価します。評価では、課題に対して実施した施策が適切だったか、成果がどの程度まで現れ始めているかといった点を確認しましょう。評価を行う際は、施策に対する直接的な数値だけでなく、主観的健康度や意識の変化、仕事へのモチベーションの変化などの間接的な変化を把握することが大切です。

参照:「健康経営ガイドブック」健康経営優良法人認定事務局編
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/002_s01_03.pdf

健康経営の取り組み事例

ランニングをする男女

続いて、企業が行う健康経営の取り組み事例をいくつかご紹介します。

スタンレー電気株式会社

スタンレー電気株式会社では、「スタンレーグループ健康宣言」を掲げて、在宅勤務制度や育児・介護休業の導入を行っています。

また、「ウェルスタ7」と呼ばれる7つの健康行動を定め、各項目を点数化しています。ウェルスタ7では、推進施策としてチーム禁煙イベントや体力測定会を実施していて、従業員一人ひとりが自身の健康課題を振り返るきっかけになっているようです。

参照:スタンレー電気株式会社 https://www.stanley-electric.com/jp/sustainability/social/wellness/

イオン株式会社

イオン株式会社は、2016年度に「イオン健康経営宣言」を掲げて、グループ全体で健康経営に取り組んでいます。具体的な取り組みとしては、健康診断の結果に応じた保健健康指導や卒煙セミナーの開催、ストレスチェックをもとにした職場環境改善などを行っています。

また、「皆が健康に生きられる共生社会の実現に貢献したい」という考えのもと、地域の方向けに健康関連イベントなどを実施していることも特徴です。

参照:イオン株式会社 https://www.aeon.info/sustainability/health/

三菱マテリアル

三菱マテリアルは、従業員の安全と健康を重要な要素と捉え、健康経営を積極的に推進しています。主な取り組みとしては、健康セミナーの開催、ストレスチェックの実施、オンライン禁煙外来の受診勧奨、乳がん触診体験などがあげられます。

また、運動習慣の向上を目的とし、始業前後体操の実施や健康支援アプリを用いたウォーキングイベントを開催していることも特徴です。イベントの参加者からは、「歩くことを意識するきっかけになった」「数値が出るからやる気が生まれた」といった声が出ています。

参照:三菱マテリアル https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/health_mgt/

株式会社タニタ

株式会社タニタは、従業員の健康状態を可視化するために「タニタ健康プログラム」を開発しました。従業員証代わりに活動量計を配布していて、日々の歩数や消費カロリーなどを記録・分析し、社内に設置した体組成計で健康状態をチェックできるようにしています。

また、「からだ」「こころ」「しゃかい」の3つの側面から健康をサポートすることを掲げ、ノー残業デーを設置したり社員食堂でヘルシー健康的な食事を提供したりする取り組みも行っています。

参照:株式会社タニタ https://www.tanita.co.jp/activities/health_management/efforts/

まとめ

オフィス街に差し込む光

健康経営に取り組む際は、経営層から従業員まで会社全体が一丸となり取り組んでいける施策を計画することが大切です。具体的な施策は、運動習慣の定着を目指した社内イベントや、健康状態の見える化を目的とする健康支援アプリの導入など、企業ごとに自由に設定できるので最終目標に合わせて考案していくと良いです。

健康経営を行うことで、従業員のモチベーション向上や職場全体の活性化が期待できます。企業イメージにも良い影響を与えられるので、自社の課題に向き合いながら段階的に取り組んでみましょう。


健康支援BonAppetitでは、健康経営優良法人認定取得に向けた支援を行なっています。健康経営に取り組んでみたい、取り組んでいるがうまくいかないという場合は、ぜひ一度ご相談ください。より効果的な施策で、従業員の健康と企業の成長を促進しましょう!

この記事を書いた人

植村瑠美

管理栄養士 健康科学修士
健康経営エキスパートアドバイザー
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種

◆Profile◆
(株)健康支援BonAppetit 代表取締役
急性期総合病院で管理栄養士として10年間勤務し、生活習慣病患者を中心に5,000人の栄養指導を担当。現在は、多くの人が利用するコンビニ食や外食から始められる「食事の選び方」に着目した食事改善法をセミナー等で伝える。栄養素から伝える“理想的な食生活” ではなく、身近な食品から伝える  “超実践的な食生活”を伝えるセミナーが行動変容が起きやすいと好評。


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