社員の健康診断結果に改善が見られない、従業員の健康意識が低い、そんなお悩みを抱えていませんか?
中小企業において、従業員の健康管理は経営課題の一つとなりつつあります。40〜50代以降は生活習慣病患の者が急増し、適切な治療や生活習慣の改善が行われないと、心筋梗塞や脳卒中などに発展することもあります。人材不足が蔓延する中で、生活習慣病によって従業員の力を失うことは中小企業にとっては大きな痛手となります。
生活習慣病の予防は将来の人材確保につながります。生活習慣病は心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患のひきがねとなり、休職や離職と至るからです。優秀な人材を確保するためにも、生活習慣病の発症が増加する手前の30代から、生活習慣病のリスク管理を行うことが中小企業おいては特に重要です。
生活習慣病のリスク管理につながる従業員の健康意識を高める施策として注目されているのが「食育セミナー」です。この記事では、中小企業が直面する健康課題を解決するための「食育セミナー」の具体的な効果や実践法をわかりやすく解説します。
健康経営に取り組む中小企業が直面する健康課題
多くの企業が「健康経営優良法人認定」を目指し、従業員の健康増進に力を入れています。中小規模法人部門での認定数は2023年度は16,733件となり、前回から2,721件増加しました。5年前の2018年度の2,501件と比較すると約6.7倍の増加率と、健康経営の広がりががよく分かります。
※経済産業「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」より抜粋
しかし、認定取得を目指し、健康増進施策に取り組んではいるものの、思ったような結果が得られていないという現状もあるようです。中小企業が直面することが多い健康課題は主に2つあります。
①健康診断結果の改善が見られない
食事、運動、睡眠などのさまざまな健康増進施策を行なったけれど、毎年の健康診断の数値の改善が見られない、このような状況になりでしょうか。実は、血糖値、LDLコレステロール値、血圧、肝機能などの健診結果の数値に変化が現れないと悩む企業が多いのが実情です。
保健師による保健指導や、特定保健指導など、従業員に対して個別に介入できる場合は、従業員のライフスタイルに合わせた支援ができるため、生活改善につながり、健康診断結果にもその結果は現れやすいものです。しかし、全社的な施策を数回行っただけでは、思うような改善が見られないことが多いでしょう。
短期間で改善結果が見られるものではありません。取り組みが健康診断結果の改善につながるものなのか、改善にはどのくらいの時間を要するかを自社で判断することが困難な場合は、保健師や管理栄養士、健康経営エキスパートアドバイザーなどの専門家に相談することをおすすめします。
②健康意識の低い従業員
健康増進施策を行なっても参加してくれない、健康状態が心配な人ほど健康に対して後ろ向き、といった健康意識の低い従業員への対策に悩んでいないでしょうか。
「健康経営を実施するなら、全社員を健康にしたい!」と担当者は考えがちですが、どのようなライフスタイルを送るかは、個人の自由です。無理に生活改善を強いることはできません。健康施策への参加を強要してしまうことで、かえって従業員の健康意識を下げてしまうこともあります。
健康意識が低い従業員が、自ら自分の健康が気になるまで待つことも重要です。毎年の健康診断の受診と、その結果に応じて必要な対応は行う、ということだけを約束してもらい、しばらくは経過を観ることにしましょう。健診結果に応じて行うべき必要な対策とは、受診勧奨(健康診断の結果で二次検査や精密検査が必要な場合に病院受診を会社が勧めること)、産業医面談(血糖値や血圧等が高値の場合、産業医に就業判定してもらうこと)などを指します。
経過を観る間、社内で健康経営の取り組みが広がり、従業員の健康意識や健康づくりの社内風土が高まることで、これまで健康意識が低かった従業員が健康に気遣い始めることもあります。健康経営担当者からのアプローチではなく、その従業員が信頼している上司や先輩、仲の良い同僚から健康に関するアプローチをしてもらうことも良いでしょう。
課題解決には継続的な食育セミナーが効果的
これらの課題を中小企業が解決するためには、継続的な食育セミナーを行うことが非常に効果的です。運動に関するセミナーやイベントも参加者満足度が高く、健康課題の解決につながる可能性は十分にあります。しかし、運動を習慣化しなければ、健康診断結果の改善にはつながりません。従業員が運動を継続しやすい環境や風土をつくることが難しい場合があります。
一方で、食事は誰もが毎日行う上に、勤務中に1回以上の食事機会があるでしょう。自宅では好きなものを食べてしまったとしても、職場で食べる1食だけでも健康に配慮ができれば、将来の健康に影響を与えることは可能です。従業員の健康意識を醸成し、生活習慣を変化させるきかっけづくりに食育セミナーは効果的な手段といえます。
1年に1,000回ある生活改善のチャンス
私たちの体は、自身が食べたもので作られています。日々の食事をどのように選ぶかは、体を健康に近づけるか、病気に近づけるかの分かれ道になります。特に生活習慣病(糖尿病、高血圧、高LDLコレステロール血症、肝機能障害、脳血管疾患など)への影響は非常に大きいといえます。
1日3食×365日と考えると、1年で1,000回以上も食事の回数はあります。間食や夜食も加えるとさらに回数は増えます。つまり、1年で1,000回以上も健康と病気の分かれ道に立つということです。毎日、毎食を健康的な食事にすることは非常にハードルが高いですが、1日1食だけでも健康に配慮することができれば、体への影響は大きく変化します。適切な食事は生活習慣病の予防だけでなく、メンタル不調の予防にも大きく寄与します。1年に1,000回訪れる生活改善のチャンスを逃すわけにはいきません。
食育セミナーでは、毎日の食事を健康に近づけるためのヒントを学ぶことができます。年に1回の食育セミナーでも効果はあるかもしれませんが、1度学んだだけで生活改善することは難しいでしょう。定期的かつ継続的な食育セミナーが開催できれば、1,000回の生活改善チャンスを有効に活用できるのではないでしょうか。
健康診断結果の改善に食生活改善は必須
LDLコレステロール、中性脂肪、血糖値、血圧、肝機能などの数値が基準値以上の場合、食生活の改善はかかせません。具体的な対策を従業員任せにしてしまうと、SNSやインターネットで広がる間違った情報を信じてしまったり、間違った知識で健康食品などを選んでしまうと、他の病気を誘発したり、さらに悪化をさせてしまうこともあります。
正しい対策を身につけるためには、専門家から学ぶことが重要です。従業員自身が専門家にアクセスすることは困難なため、健康経営担当者が専門家による食育セミナーを企画し、従業員が正しい知識を学ぶ機会を設けましょう。保健師や食の専門家である管理栄養士から学ぶ機会となる食育セミナーが開催できれば、健康診断結果の改善が大きく前進するでしょう。
食育セミナーの効果と効果的な開催方法
専門家による食育セミナーの効果
- 健康意識の向上:
正しい健康情報と実践しやすい具体的な食生活改善方法を学ぶことで、従業員の健康意識が高まります。健康意識が高まることで、運動や睡眠などにも配慮するようになるでしょう。 - 生活習慣病リスクの低下:
適切な食生活の知識を学び、実践することで健康診断結果が改善。将来の心筋梗塞や脳卒中などの大きな病気を発症するリスクも低下します。 - メンタル不調のリスク低下:
食事はメンタルにも影響を与えます。適切な食生活が定着することでメンタル不調を予防することができます。
専門家に食育セミナーを依頼することで、正しい情報を分かりやすく伝えてくれるので従業員の健康行動につながりやすくなります。継続的に食育セミナーを開催することができれば、健康行動の定着にも大きな効果を発揮するでしょう。
効果的な食育セミナーを開催する流れ
- 健康課題と従業員ニーズの把握
健康診断結果から、自社の健康課題を把握しましょう。加えて、従業員が感じる健康課題や食生活状況などについてアンケートを実施することで、従業員のニーズが明確になります。
自社で実施することが難しい場合は、健康経営エキスパートアドバイザーなどに相談することをお勧めします。 - 食育セミナーの企画
テーマや講師を選定し、食育セミナーを開催する準備を始めましょう。講師にも健康課題や従業員のニーズを伝えることで、より具体的で課題解決につながる食育セミナーの企画となります。従業員が参加しやすい開催方法や時間帯を選ぶことも大切です。 - セミナー当日
一方的な講義よりも、ワークやクイズがある参加型のセミナーにすると良いでしょう。講師は具体的で実践しやすい内容を分かりやすく伝えてくれるので、健康経営担当者は従業員の反応を確認することも大切です。セミナー後にアンケートを実施することで従業員がどんな学びを得たかが把握できます。 - フォローアップ
従業員がどんなことを学んだのか、実生活に取り入れたことは何かなどヒアリングすることで、アンケートでは把握しきれない食育セミナーの効果を確認することができます。従業員の健康行動が定着しやすいように定期的に声をかけていきましょう。 - 次回の食育セミナーの企画
1回の食育セミナーでは、行動変容を定着させることは困難です。アンケートやフォローアップで見えた結果をもとに、従業員の健康行動が定着するような企画を立てましょう。もちろん睡眠や運動をテーマにした健康セミナーも効果的です。
まとめ
健康経営において、従業員の健康意識を高める「食育セミナー」は重要なステップです。特に中小企業では、費用やリソースの制限が多く、社員食堂がない場合や、健康弁当を頼みたくても適切な業者が見つからない場合などの課題に直面します。健康的な食事を提供することが難しい場合は、まずは知識を提供することから考えてみましょう。
食生活の改善は、確実に健康診断結果の改善につながります。そして、従業員の健康は企業の成長に直結します。健康な職場をづくりに食育セミナーを活用しましょう。
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健康支援BonAppetitでは、管理栄養士と健康経営エキスパートアドバイザーの資格を有する代表が、貴社にぴったりの健康経営施策の提案に加え、実践的な食生活セミナーなどを開催することがで、健康経営に取り組む中小企業をサポートしています。従業員の健康増進と生産性向上を実現したいとお考えでしたら、ぜひご相談ください。より効果的で長期的な健康経営施策で、従業員の健康と企業の成長を促進しましょう!
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この記事を書いた人
植村瑠美
管理栄養士 健康科学修士
健康経営エキスパートアドバイザー
◆Profile◆
(株)健康支援BonAppetit 代表取締役
急性期総合病院で管理栄養士として10年間勤務し、生活習慣病患者を中心に5,000人の栄養指導を担当。現在は、多くの人が利用するコンビニ食や外食から始められる「食事の選び方」に着目した食事改善法をセミナー等で伝える。栄養素から伝える“理想的な食生活” ではなく、身近な食品から伝える “超実践的な食生活”を伝えるセミナーが行動変容が起きやすいと好評。