「健康経営に取り組みたいけど、何から始めたら良いか分からない…」
「従業員の健康状態を改善したいけど、効果的な施策が思いつかない…」
こんな悩みをお持ちの健康経営担当者の方も多いのではないでしょうか?
近年、従業員の健康管理は企業にとって重要な課題となっています。
従業員の健康状態が悪化すると、休職や離職、医療費増加など、企業に多大な損失をもたらす可能性があります。そこで注目されているのが「健康経営」です。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営戦略に組み込み、従業員一人ひとりの健康増進と働きがいのある職場環境づくりを通じて、従業員と企業の双方にとってより良い未来を創造していく取り組みです。健康経営を推進することで、従業員の健康状態の改善、生産性向上、企業価値向上など、様々な効果が期待できます。
健康経営の取り組みの中でも、特に注目されているのが「食生活改善」です。
食生活は、従業員の健康状態に大きく影響を与える要素の一つであり、食生活を改善することで、様々な健康上のメリットが期待できます。この記事では、健康経営の観点から食生活改善の重要性について解説し、従業員の健康状態の改善や生産性向上に繋がる具体的な施策や導入事例を紹介していきます。
ぜひ最後まで読んで、健康経営における食生活改善の重要性を理解し、自社の取り組みをより効果的に推進するためのヒントを見つけてください。
健康経営と食生活改善の関係性
健康経営と食生活改善は、密接な関係にあります。従業員の健康状態を改善し、企業の成長を促進するためには、食生活改善は欠かせない要素と言えるでしょう。
健康経営における食生活改善の必要性
健康経営において、なぜ食生活改善が重要なのでしょうか?それは、食生活が従業員の健康状態に大きく影響を与えるからです。
現代社会では、不規則な食生活や偏った食事、外食の増加などにより、多くの従業員が健康リスクに晒されています。これらの要因は、生活習慣病のリスクを高め、ひいては従業員の健康状態を悪化させる可能性があります。生活習慣病は、心疾患、脳卒中、糖尿病、がんといった様々な病気のリスクを高めることが知られており、従業員の健康状態悪化だけでなく、企業にとっても大きな負担となります。
厚生労働省が発表した「令和4年度国民健康・栄養調査結果の概要」によると、肥満者(BMI≧25)の割合は男性31.7%、女性21.0%でした。この10 年間でみると、女性では有意な増減はみられないのに対し、男性では有意に増加しています。また、メタボリックシンドロームの予備群に該当する人の割合も高く、生活習慣病のリスクが高い状態であることが分かります。
これらの問題を解決し、従業員の健康状態を改善するためには、食生活改善が不可欠です。健康的な食生活を送ることで、生活習慣病のリスクを抑制し、心身ともに健康な状態を維持することができます。
食生活改善施策が経営へもたらす効果
食生活改善は、健康経営をすすめる上で、経営にどのような良い影響を与えるのでしょうか?
具体的な効果を3つの観点から見ていきましょう。
食生活改善が健康経営にもたらず効果
- 健康増進による休職・離職率の低下
- 生活習慣病予防による医療費削減効果
- メンタルヘルス改善による従業員エンゲージメントの向上
生活習慣病予防による医療費削減効果
食生活の改善は、生活習慣病の予防にも効果的です。生活習慣病は、食生活、運動習慣、喫煙習慣などが原因で発症する病気で、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症)などが挙げられます。これらの病気は、治療費や薬代など、企業の医療費負担を増大させる要因となります。
健康的な食生活を心がけることで、生活習慣病の発症リスクを抑制し、企業の医療費負担を軽減することができます。医療費削減は、企業の経営安定にも大きく貢献するでしょう。食生活改善による医療費削減は、企業にとって大きな経済効果をもたらします。
メンタルヘルス改善による従業員エンゲージメントの向上
食生活の改善は、メンタルヘルスの改善にも繋がることが期待できます。栄養バランスの偏った食事や不規則な食事は、ストレスや不安、抑うつなどの精神的な問題を引き起こす可能性があります。一方、健康的な食生活は、精神的な安定にも貢献します。
また、食生活改善を通して、従業員同士がコミュニケーションを図る機会が増えることで、チームワークや一体感が向上し、職場環境がより良好になることも期待できます。
従業員エンゲージメントの向上は、従業員の定着率向上、生産性向上、顧客満足度向上など、様々な良い影響をもたらします。食生活改善は、従業員のメンタルヘルスを改善し、企業全体のエンゲージメントを高める効果も期待できるのです。
健康増進による休職・離職率の低下
健康的な食生活は、心身の健康増進に繋がり、病気のリスクを減らす効果が期待できます。従業員が健康であれば、病気による休職や長期的な療養を減らし、安定した労働力を確保することができます。
休職や離職は、企業にとって大きな損失となります。従業員の育成や採用に時間と費用がかかるだけでなく、業務の遅延や生産性の低下にも繋がります。健康増進による休職・離職率の低下は、企業にとって大きなメリットとなります。
実際に、ある企業では、従業員食堂のメニュー改善や健康セミナーの実施など、食生活改善に取り組んだ結果、休職者数が15%減少したという事例もあります。
食生活改善を推進する健康経営施策
では、具体的にどのような施策で従業員の食生活改善を推進すれば良いのでしょうか?
ここでは、従業員向けの啓蒙活動、食事環境の改善、社内制度の導入の3つの観点から、効果的な施策を紹介します。
①従業員向けの啓蒙活動
従業員の食生活改善を推進する上で、まず重要なのが、従業員への意識改革です。
従業員に健康的な食生活の大切さを理解してもらい、自ら積極的に食生活改善に取り組めるように促すことが必要です。
社内イベントやセミナーによる意識改革
健康的な食事に関するセミナーや、料理教室、栄養相談会などを開催することで、従業員に食生活改善の重要性を理解してもらい、具体的な行動に繋げることができます。
管理栄養士や招いて、栄養バランスの大切さや、健康的な食事の選び方、簡単なレシピなどを学ぶ機会を提供しましょう。また、従業員が楽しみながら参加できるような、クイズやゲームを取り入れたイベントも効果的です。
「健康的なお弁当作りコンテスト」や「管理栄養士による個別栄養相談会」などを開催することで、従業員の関心を高め、食生活改善へのモチベーションを高めることができます。
健康診断結果に関するセミナーや個別指導
健康経営を進める上で、健康診断の受診率を100%にすることは必ず到達すべき項目です。
加えて、従業員が健康診断の結果をもとに、生活改善を行うことができれば、本当の健康管理につながります。そのためには、セミナーや個別指導で健康診断結果の見方やを伝えることで、従業員自身の健康状態に対する意識を高めることができます。
健康診断の結果で、脂質異常症や高血圧などのリスクが見つかった場合は、その原因や改善策を具体的に説明し、食生活改善の必要性を伝えることも重要です。保健師や管理栄養士による個別相談の機会を設け、従業員一人ひとりの状況に合わせた食事指導を行うことも効果的です。
メタボ予防や生活習慣病予防・改善を目的とした、健康診断の見方セミナーや、個別相談の機会を設けることで、従業員自身がしっかりと自身の健康と向き合い、自分ごととして健康管理をとらえるようになるでしょう。
社内報や社内ポータルサイトを活用した情報発信
社内報や社内ポータルサイトに、健康的な食事に関するコラムやレシピなどを掲載することで、従業員に継続的に情報提供することができます。
健康的な食事の重要性、栄養バランスの考え方、具体的なレシピ、外食時の注意点などを分かりやすく解説しましょう。また、従業員が積極的に情報収集できるような、Q&Aコーナーやアンケートなどを設置することも効果的です。
社内報などは見落とされることが多い場合は、LINEを活用して健康情報を発信することもお勧めです。健康情報に触れる機会が多いほど、健康意識は高まりやすくなるので、従業員が情報にアクセスしやすい環境をつくると良いでしょう。
②食事環境の改善
従業員が健康的な食事を選択しやすくするためには、食事環境の改善も重要です。社内食堂やオフィス内の飲食環境を整えることで、従業員が自然と健康的な食事を選択できる環境を作り出すことができます。
社員食堂での健康メニューの提供
社員食堂で、健康的なメニューを提供することで、従業員が手軽に栄養バランスの良い食事をとれる環境を整えましょう。
運用までにコストと手間はかかりますが、栄養バランスの良い食事を体験しながら学ぶことにつながるので、健康管理へのインパクトは大きいものとなります。
社員食堂では、管理栄養士と連携して、栄養バランスに優れたメニューを提供できることが理想です。野菜中心のメニューや、減塩のメニューなどを提供することで、従業員の健康的な食生活をサポートしましょう。メニューにカロリーなどの栄養成分を表示することも良いでしょう。
健康メニューを毎日提供することが難しい場合は、「週に1回、野菜中心のヘルシーランチを提供する」などから始めてみることも良いでしょう。
オフィス環境の整備
オフィス環境を整えることで、従業員が健康的な食生活を送りやすくなります。
健康に配慮した食品の販売コーナーや健康的な飲料を中心に販売する自動販売機設置などは、従業員が手軽に健康的な食品を手にする機会を増やすことにつながります。
ナッツ類やドライフルーツ、ヨーグルトなどや、トクホ商品などの健康に配慮した食品が良いでしょう。
その他、大豆やオートミールを原料とした菓子類や、ハイカカオのチョコレートなどもお勧めです。
自動販売機の飲料は、清涼飲料水やエナジードリンク中心ではなく、ミネラルウォーターやお茶、無糖のコーヒーや紅茶などの健康的な飲み物の割合を増やすことで、従業員が飲料から摂取する糖分やカロリーを抑えることにつながります。
社員食堂のメニューを変更するほどの手間がかからず実施できるのでお勧めです。
③社内制度の導入
健康増進のためのインセンティブ制度
健康的な食生活を送ったり、運動習慣を身につけたりした従業員に、ポイントやギフト券などを付与するインセンティブ制度を導入することで、従業員のモチベーションを高めることができます。
例えば、「健康的な食事の写真をSNSに投稿するとポイントがもらえる」といった制度や、「目標体重達成者にギフト券をプレゼントする」といった制度が考えられます。
健康増進のためのインセンティブ制度は、従業員の健康意識を高め、継続的な行動変容を促す効果が期待できます。
従業員向けの食生活改善サポートプログラム
従業員向けの食生活改善サポートプログラムを導入することで、従業員一人ひとりの食生活の改善をサポートすることができます。
例えば、管理栄養士による個別相談、オンラインでの栄養指導、食生活改善アプリの利用などの提供です。従業員が自分の食生活を見直し、改善することにつながります。また、従業員同士が食事に関する情報交換や意見交換ができるコミュニティを構築するのも良いでしょう。
まとめ|食生活改善で従業員の健康と企業の成長を両立させよう!
この記事では、健康経営における食生活改善の重要性について解説し、従業員の健康状態の改善や生産性向上に繋がる具体的な施策を紹介しました。
食生活改善は、従業員の健康増進、医療費削減、生産性向上、従業員エンゲージメント向上など、企業にとって様々なメリットをもたらします。健康経営の取り組みの一環として、ぜひ食生活改善に取り組んでみてください。
従業員の健康状態を改善し、企業の成長を促進するためには、従業員一人ひとりの食生活改善をサポートすることが重要です。従業員のニーズを把握し、効果測定とPDCAサイクルを回しながら、継続的に改善していくことで、より効果的な食生活改善施策を展開することができます。
この記事が、健康経営担当者の方々の食生活改善施策の導入の一助となれば幸いです。
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この記事を書いた人
植村瑠美
管理栄養士 健康科学修士
健康経営エキスパートアドバイザー
◆Profile◆
(株)健康支援BonAppetit 代表取締役
急性期総合病院で管理栄養士として10年間勤務し、生活習慣病患者を中心に5,000人の栄養指導を担当。現在は、多くの人が利用するコンビニ食や外食から始められる「食事の選び方」に着目した食事改善法をセミナー等で伝える。栄養素から伝える“理想的な食生活” ではなく、身近な食品から伝える “超実践的な食生活”を伝えるセミナーが行動変容が起きやすいと好評。