良い睡眠とは?30〜50代が実践したい“眠りの質を上げる”5つの習慣

朝はスッキリ起きられていますか?毎朝「また寝不足…」と感じていませんか?
仕事・家事・育児・介護——働き盛りの30〜50代は、やることが多すぎて、どうしても睡眠を後回しにしがちです。しかし、慢性的な寝不足は集中力・判断力を下げ、生活習慣病やメンタル不調のリスクを高めることがわかっています。

まずは、あなたの“眠りの現状”をチェックしてみましょう。

【睡眠セルフチェック】いくつ当てはまりますか?

  • 睡眠時間が足りていない
  • 朝目覚めた時に休まった感覚がない
  • 日中に眠気が強い
  • 寝る前や寝床でスマートフォンなどのデジタル機器を使う
  • ストレスが強く、日中に解消しきれない
  • 食事時間が不規則だ
  • 夕方以降によくカフェインをとる
  • 喫煙や寝酒習慣がある
  • 睡眠環境、生活習慣、嗜好品のとり方を改善しても眠りの問題が続いている

厚生労働省「成人のためのGood Sleepガイド」より引用

いくつあてはまりましたか?あてはまる項目が多い人は要注意です!良い睡眠とは言えない状況である可能性が高いため、まずは自分でできることから改善してみましょう!
※最後の項目に該当する場合は、専門家に相談することをお勧めします。

ここからは、最新の研究と実例をもとに「良い睡眠とは何か」そして「どうすれば改善できるのか」を、わかりやすく解説します。ご自身の生活を振り返りながらご覧ください。

良い睡眠とは?

良い睡眠

良い睡眠の定義はさまざまですが、良い睡眠とは「十分な量」と「質の高い眠り」が両立し、朝すっきり目覚められる状態を指します。
寝つきが良く、途中で目が覚めにくく、翌日に疲れを持ち越さない——そんな眠りが理想です。良い睡眠につながる3つのポイントを見ていきましょう。

Point① 量:6時間以上を目安に十分な睡眠時間を確保

仕事、家庭、趣味と、忙しい生活を送っていると慢性的な睡眠不足になりがちです。毎日十分な睡眠時間を確保できるように生活を工夫することが大切です。

複数の調査研究から、7時間前後の睡眠時間の人が、生活習慣病やうつ病の発症および死亡に至る危険性が最も低く、これより長い睡眠、短い睡眠のいずれもこれらの危険性を増加させることから、成人では6~8時間が適正睡眠時間と考えられています

令和元年に実施した国民健康・栄養調査によると、睡眠時間が6時間以上8時間未満の割合が、20歳~39歳で54.0%、40歳~59歳で47.7%、60歳以上で55.8%と、6時間以上の睡眠がとれている人は半数程度でした。一方で、6時間未満の人が、20歳~39歳で40.0%、40歳~59歳で49.5%、60歳以上では32.5%存在し、特に働く世代での睡眠不足が課題となっていることが分かります。

短時間睡眠は、心血管疾患や糖尿病、うつ病、認知機能の低下などのリスクを高めることが報告されています。

睡眠時間が足りていない、目覚めた時に休養感がない、日中に眠気が強いと感じているのであれば、少しでも長く睡眠時間が確保できるような生活の工夫を検討してみましょう。

参照:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」

Point② 質:「眠れた感じ」が何よりの指標

睡眠時間だけに注目しがちですが、忘れてはいけないのが睡眠の質です。どうしても時間を長くすることが難しい場合は、睡眠の質を高めるような工夫をすることが大切です。

睡眠の質を左右するのは、中途覚醒の少なさ寝つきの速さ、そして起床時の休養感です。朝目覚めた時に休養感がない場合は、睡眠の質に課題がある可能性があります。アメリカの国立睡眠財団(National Sleep Foundation:NSF)の指標では、入眠まで30分以内、夜中の覚醒1回以下、睡眠効率87.5%以上が理想とされています。

ストレスが高い状態のまま寝床に入ると睡眠休養感が低下します。日中のうちにストレスを発散させて、寝る前にはリラックスした状態でいることが大切です。また、就寝前にスマホやゲームなどのデジタル機器使用すると、ブルーライトの影響や脳の興奮により寝つきが悪くので注意が必要です。

また、カフェイン・飲酒・喫煙も睡眠に悪影響を与えます。特に寝酒は中途覚醒を増やすため、睡眠の質を低下させることになります。眠れないからとアルコールに頼ることは望ましくありません。

Point③ 規則性:体内時計に合った“眠るリズム”を

就寝・起床時刻がバラバラだと、体内時計が乱れて睡眠の質が下がります。私たちの体は体内時計によって、自然な眠気や目覚めが引き起こされているからです。

特に夜型になりやすい働く世代は、「寝る時間」よりも「起きる時間の固定」を優先すると体内時計が整いやすいことが研究で示されています。平日は6時半起き、休日は9時起き——そんな生活を続けていませんか?この「社会的時差ぼけ(ソーシャル・ジェットラグ)」は、日中のパフォーマンスや気分に悪影響を及ぼすことが知られています。週末に寝だめをするより、起床時間は±1時間以内にするように心がける方が、体はリズムを保ちやすくなります。

食事の時間も体内時計を整える役割があります。食事の時間が不規則な人は、食事の時間を整えることも睡眠の質を改善することにつながります。

働く世代に多い睡眠負債

睡眠負債を抱えて働く

慢性的な睡眠不足の状態が続くことを睡眠負債といいます。睡眠の借金をしている状態で、この負債は休日の寝だめでは返済できません。働き盛りの30~50代の4〜5割の人の睡眠時間が6時間未満の人と、十分な睡眠時間が確保できておらず、睡眠負債を抱えている可能性があります。

睡眠負債を抱えると次のような影響が起こりやすくなります。

  • 仕事中の判断力・集中力の低下
  • 自律神経の乱れによる血圧上昇
  • 食欲を調整するホルモンの乱れによる肥満リスク増加
  • イライラ・落ち込みなどのメンタル不調
  • 免疫力の低下、がん、認知症などのリスク増加

睡眠はただの休息ではなく体の能力を回復させるための時間です。十分に眠ることは、仕事の成果にも健康にも直結する行動なのです。

今日からできる「良い睡眠」への5ステップ

良い睡眠

良い睡眠のために今日からできることを探してみましょう。まずは無理をせずに実行できることから始めてみましょう!

Step① 起床時刻を固定する

就寝時刻よりも大切なのが起床時刻です。日々の起床時刻の差は±1時間以内にしましょう。休日はゆっくり眠りたい場合も、平日と同じ時間に起きて、昼間に昼寝をするようにしましょう。

起床時刻が遅れると、体内時計が乱れて体のリズムが崩れます。二度寝も体内時計を乱す原因となります。

Step② 日中の過ごし方を工夫する

意外かもしれませんが、日中の過ごし方がその日の睡眠の質を左右します。工夫できそうなものを選んでトライしてみましょう!

  • カフェインを多く含む飲料は午後3〜4時までにする
  • 昼寝は20分以内、午後3時までに終える
  • 夕方以降は仮眠をしない
  • 激しい運動は夕方までに終える
  • 夕食後は明るい白色灯ではなく、暖色灯にして過ごす
  • お酒は夕食と一緒に飲む

睡眠に影響を与える、カフェインやアルコール、仮眠に関する対策が重要です。夕方以降の仮眠は、夜間の睡眠の質を下げてしまいます。帰宅時の電車内や夕食後のうたた寝は避けるようにしましょう。

Step③ 就寝60分前からは光の刺激を減らす

強い光は覚醒作用があります。夕食後の室内灯を調整して過ごすことがも大切ですが、最も大切なのは特に就寝60分前のスマホやパソコン、ゲーム機などのデジタル機器の光です。これらの光は、眠りを誘うホルモン「メラトニン」を抑制します。

寝る直前までデジタル機器を触っていたり、寝床に持ち込むことはやめましょう。

Step④ 就寝90分前の入浴で深部体温を高める

睡眠は深部体温と深い関わりがあり、深部体温が下がる時に、深い眠りへと導かれます。寝つきを良くするためには、体温のコントロールが大切です。

就寝の90分前頃に40度前後のぬるめの湯船に浸かることで、深部体温が一度上昇し、その後ゆっくり下がることで自然な眠気が生じ、良い睡眠へとつながります。

シャワーでは、体の表面の温度しか上昇しないため、湯船にゆっくりと浸かることが大切です。

Step⑤ 眠れないなら布団から出る

眠れないのに、無理に布団の中で過ごしていないでしょうか。眠れないのであれば、一度布団から出ましょう。

  • 不安な事や悩み事はすべて紙に書き出す
  • 眠くなるまでソファなどでゆったり過ごす
  • カモミールやラベンダーなどのハーブティーでリラックスする
  • 軽いストレッチでリラックスする

「目を閉じているだけでも睡眠と同等の効果がある」と以前は言われていました、これは間違いで、目を閉じるだけでは睡眠の効果は得られません。眠くなってから布団に入ることが大切です。

まとめ:良い睡眠は仕事の質を左右する

睡眠の質

30〜50代の働く世代は、睡眠を後回しにしがちですが、「良い睡眠」が仕事の質・家庭での時間・健康維持に直結する世代でもあります。

本記事でお伝えしたように、良い睡眠とは量、質、タイミングの3つのポイントが重要です。今日からできるステップから、まずは一つだけ実践し、習慣化していきます。習慣が変われば、眠りが変わり、目覚めが変わり、日中のパフォーマンス・気分・人生の充実感も少しずつ変わっていきます。
あなた自身と、あなたの働く環境・家庭・人生にとって、良い睡眠は「贅沢」ではなく「必要な投資」です。

ぜひ、今日から“良い眠りの第一歩”を踏み出してみてください。

まずは、自社でも取り入れやすい取り組みから始めてみましょう。こうした一歩が、将来的には企業価値や採用力を高める大きな原動力となるはずです。


健康支援BonAppetitでは、睡眠改善セミナーを行なっています。従業員のパフォーマンスアップ、心身の健康維持のために、睡眠改善セミナーを開催してみませんか?

この記事を書いた人

植村瑠美

管理栄養士
ビーイングコミュニケーション・トレーナー
睡眠改善インストラクター
健康経営エキスパートアドバイザー
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種
健康科学修士

◆Profile◆
(株)健康支援BonAppetit 代表取締役
急性期総合病院で管理栄養士として10年間勤務し、生活習慣病患者を中心に5,000人の栄養指導を担当。現在は、多くの人が利用するコンビニ食や外食から始められる「食事の選び方」に着目した食事改善法をセミナー等で伝える。栄養素から伝える“理想的な食生活” ではなく、身近な食品から伝える  “超実践的な食生活”を伝えるセミナーが行動変容が起きやすいと好評。


関連記事

セミナー・研修
活動報告|製薬メーカー様にて睡眠改善セミナーを担当
健康経営
メンタルヘルスと食事の関係|ストレスを軽減する食生活とは
健康経営
朝食欠食の影響とは?肥満・メンタル不調などの健康リスクと企業損失