健康経営の次なるステップを目指すには…
従業員の健康は企業成長の基盤のひとつといっても過言ではないでしょう。
特に健康経営優良法人認定を取得した企業が、健康経営を次なるステップへと繋げるために注目するものが「食事」「睡眠」「運動」です。これらは健康の基盤であり、生活習慣病予防や生産性向上に直結します。しかし、予算やリソースに限りがある場合、どのように取り組むべきか悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「食事」に焦点を当て、実績のある事例や具体的な施策を通じて、効果的な食生活改善の方法を解説します。特に予算やリソースに制限がかかりやすい中小企業が、健康経営優良法人認定の認定取得を継続し、従業員の健康維持にも成果が出るようなヒントも盛り込みましたので、ぜひ最後までご覧ください。
健康経営と食生活改善の重要性
健康経営優良法人認定とその意義
健康経営優良法人認定は、従業員の健康を守る取り組みを積極的に行う企業を表彰する制度です。中小企業にとっては、地域社会や顧客からの信頼を得る大きな武器となります。また、認定を継続することで、採用活動やブランド力向上にもつながります。
なぜ「食生活改善」が重要なのか?
健康経営の取り組みの中で、食生活改善は特に実践しやすく、効果が現れやすい分野です。生活習慣病予防、業務効率の向上、社員満足度の改善など、多くの成果をもたらします。例えば、従業員が日常的にバランスの取れた食事を摂ることで、体調不良による欠勤が減り、全体のパフォーマンス向上が期待できます。
近年では、ストレスなどによるメンタル不調が企業の課題に挙げられることが多くなり、生活習慣病などの病気の予防に加えて、メンタル不調者を出さないための予防にも重点が置かれています。食生活改善=生活習慣病といったイメージが強いですが、実際にはメンタル不調の予防にも大きな効果を発揮します。実際に、メンタル不調者の食生活を調査すると、食生活の乱れが背景にあることがよく分かります。特に「朝食の欠食」「遅い時間の夕食」などは睡眠にも影響を与えることがあり、メンタル不調にもつながりやすいと考えられています。
健康経営における食生活改善の実践ポイント
リソースを最大限活用するための現状把握
特に中小企業では、費用やリソースに限りが生じることがあるでしょう。これらを有効活用するため、まず現状を正しく理解した上で、計画を立てる必要があります。「とりあえず何かやればいい」「あちらの会社でやっていた施策をうちでも…」では、御社の課題解決につながらない可能性もあります。
健康経営においての現状把握したい項目は、従業員の健康意識、食生活や運動状況、健康課題を正確に把握することが大切です。
- アンケートの実施
社員の健康に関する意識や食生活、運動習慣、睡眠状況を調査します。選択式の設問も良いですが、より深く現状を把握したい場合は、「健康のために取り組んでいること」「健康に関する悩み」などを質問し、フリー記入してもらうと良いでしょう。「どんな施策を希望するか」など、従業員のニーズを把握することもおすすめです。 - 健康診断結果の分析
健康診断の結果から自社の健康課題を正確に把握することは非常に重要です。特に注意したいのは、コレステロール値や、血圧、血糖値などの数値が高い社員の割合です。これらの割合は、全国・都道府県・健保内の平均などと比較することも可能です。平均よりも悪いものがあれば、優先的に取り組むべき課題として明確化するでしょう。また、健康診断時の問診票は、朝食の摂取状況や運動習慣、睡眠時間の把握にも活用できます。
生活習慣に定着しやすい施策を導入する
健康経営施策で生じやすい課題に、「その時は盛り上がったけど継続しなかった…」というものがあります。イベントを開催して参加者を集めることも重要ですが、一時期の盛り上がりで終わり、従業員の日常生活へ反映させることができなければ意味がありません。継続的に行うこと、職場風土を盛り上げるためにイベント的に行うことを分けて、「無理なく続けられる」施策を導入することをおすすめします。無理なく続けられる施策を以下に紹介します。
- 外部サービスの活用
社員食堂がない企業では、健康的な弁当のデリバリーサービスを利用するのが効果的です。地元の業者と提携すればコストも抑えられ、地域貢献にもつながります。 - 健康セミナーの開催
従業員の健康増進のためには、定期的な知識提供が欠かせません。年に数回の健康セミナーが企画できると、従業員の健康意識は定期的に高めることができます。特に、専門家へ依頼することで、具体的な改善方法などを学ぶことが可能です。食生活セミナーの場合は、管理栄養士依頼することが理想でしょう。例えば、「忙しい中でもバランスよく食事するためのコンビニ食の選び方」「体に良いお菓子の選び方「など、実用的な内容は喜ばれるでしょう。 - 健康的なお菓子や飲料の販売導入
オフィス内に自動販売機があれば、お茶やお水の販売を中心としたり、糖分が少ない飲料の割合を増やすことも良い対策となります。また、置き型のおやつ販売を利用する場合は、低カロリーや低糖質のおやつを中心に設置することも良いでしょう。カップ麺などを販売する場合も、サイズが小さいものや、減塩タイプを取り扱うこともおすすめでうす。小さな投資ですが、社員の健康意識を高める効果が期待できます。
継続可能な仕組みを作る
従業員の健康増進につなげ、健康経営優良法人認定を継続的に取得するためにも、短期的な取り組みではなく、継続可能な仕組みを構築する必要があります。PDCAを回して、施策の成果を確認し、継続できる仕組みを検討していきましょう。自社で行うことが難しい場合は、健康経営の専門家である、健康経営エキスパートアドバイザーなどに相談することも有効でしょう。
- 健康課題に対する評価
毎年の健康診断の結果を把握し、取り組みの効果を評価します。健診結果への反映には時間がかかることもあります。一度の施策で改善ができない場合も、施策の精度を高めながら経過を確認しましょう。 - メンタル不調者や欠勤者数の評価
食生活を改善することは、メンタル不調を予防・改善することにもつながります。メンタル不調を訴える人の人数や、欠勤者数などの変化も評価することも重要です。 - アンケートによる意識調査
健診結果やメンタル不調者数や欠勤者数に効果が現れるには時間を要することもあります。その前段階に従業員の健康意識や健康行動の変化があります。これらの変化を把握するためには重要員アンケートによる調査も重要です。 - 認定基準を意識した施策
認定制度が求める基準に沿ったプログラムを設計することで、次回の認定取得に向けた準備を同時に進められます。ここまでに紹介した評価をもとに、短期目標・中期目標・長期目標を定めて、継続的に施策を行うことを考えていきましょう。
健康経営を成功させるためのヒント
従業員のニーズに応じた柔軟な施策設計
「健康経営に取り組んでいるけれど、一部の従業員しか興味を持たない…」という課題もあるでしょう。多くの従業員のニーズに対応できる施策を展開できることが理想できです。従業員の声を基に柔軟な施策を取り入れることが鍵です。全てのニーズにすぐに応じることは困難ですが、中長期的な視点で考えていきましょう。実施しやすいものであれば、社員からリクエストを募り、セミナーのテーマを決めたり、自販機の飲料を変更したり、設置販売のおやつを変更するなどがあるでしょう。従業員のに合わせて改善を進めると、取り組みへの参加意欲が高まります。
外部パートナーの活用
予算やリソースに限りがある中小企業では、専門家との連携が非常に有効です。予算に限りがあるからと自社で取り組もうとすると、かえって効率が悪くなったり、成果が得られなかったりと、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスが悪化することもあります。例えば、各地域にある産業保健センターへお願いすると、無料でさまざまなサービスを受けることができます。これらを活用することでコストを抑えつつ高い効果を得られます。
健康経営エキスパートアドバイザーに相談することで、これらのリソースの提案をうけることもできるでしょう。
認定基準に沿ったPDCAサイクルの構築
施策を一度行ったら終わりではなく、定期的に見直しを行いましょう。特に健康経営優良法人認定の基準を意識しながら進めると、効果的かつ認定維持に直結する取り組みが実現できます。自社で取り組むことが難しい場合は、健康経営エキスパートアドバイザーに相談すると良いでしょう。
まとめ:中小企業の未来を「健康経営」で支える
食生活改善は、健康経営の取り組みの中でも中小企業が実施しやすく、効果が高い分野です。健康経営優良法人認定の取得を継続したい企業にとって、日々の施策が次回の認定に直結することを念頭に置き、計画的に進めることが大切です。
健康経営優良法人認定を維持し、さらなるレベルアップを図るには、社員の健康を軸にした持続可能な成長戦略が求められます。食を通じた健康づくりを、次なる企業価値向上の鍵としてぜひ取り入れてみてください。
健康支援BonAppetitでは、管理栄養士と健康経営エキスパートアドバイザーの資格を有する代表が、貴社にぴったりの健康経営施策の提案に加え、実践的な食生活セミナーなどを開催することがで、健康経営に取り組む企業の皆様をサポートしています。従業員の健康増進と生産性向上を実現したいとお考えでしたら、ぜひご相談ください。より効果的で長期的な健康経営施策で、従業員の健康と企業の成長を促進しましょう!
この記事を書いた人
植村瑠美
管理栄養士 健康科学修士
健康経営エキスパートアドバイザー
◆Profile◆
(株)健康支援BonAppetit 代表取締役
急性期総合病院で管理栄養士として10年間勤務し、生活習慣病患者を中心に5,000人の栄養指導を担当。現在は、多くの人が利用するコンビニ食や外食から始められる「食事の選び方」に着目した食事改善法をセミナー等で伝える。栄養素から伝える“理想的な食生活” ではなく、身近な食品から伝える “超実践的な食生活”を伝えるセミナーが行動変容が起きやすいと好評。