ウェルビーイングを食事で育む!従業員エンゲージメント向上のための食事改善ガイド

「従業員のエンゲージメントを向上させたい」「働きがいのある環境を整備したい」と考えている人事担当者の方や経営者の方にとって、従業員のWell-being(ウェルビーイング)は重要な課題となっています。ウェルビーイングとは、単に健康であるだけでなく、心身ともに健康で、幸福感を感じ、活き活きと過ごせる状態を指します。

近年、従業員のウェルビーイングが注目を集める中、食事がウェルビーイングに与える影響が改めて認識されるようになりました。食事は、単に栄養を摂取するだけでなく、メンタルヘルス、ストレスマネジメント、睡眠の質、そして身体的健康にも深く関わっています。

本記事では、従業員エンゲージメント向上という観点から、ウェルビーイングと食事の関係性を解説し、具体的な食事改善策や導入ステップ、社内啓蒙方法などを紹介します。従業員満足度向上や定着率向上といった効果も交えながら、ウェルビーイングを食事で育むためのヒントを提供します。

従業員エンゲージメントとウェルビーイングの関係性

従業員エンゲージメントとは、従業員が抱く企業などの所属組織への貢献意欲を指します。組織が目指す方向性を理解し、それが自身の目指す方向性と重なることで組織に貢献しようと思えることは、仕事そのものへの誇りと同様に大切です。エンゲージメントの高い従業員は、仕事に意欲的に取り組み、高いパフォーマンスを発揮し、組織への貢献意欲も高い傾向にあります。

ウェルビーイングとエンゲージメントの関係

ウェルビーイングの高い従業員は、仕事に対する満足度や幸福度が高く、仕事に積極的に取り組む傾向があります。逆に、ウェルビーイングが低い従業員は、ストレスを感じやすく、仕事への意欲や集中力が低下し、離職率も高くなる可能性があります。つまり、従業員のウェルビーイングを向上させることは、エンゲージメント向上にも大きく貢献すると言えるのです。

様々な研究結果からも、ウェルビーイングとエンゲージメントの関係性が示されています。例えば、Gallup社の調査によると、ウェルビーイングの高い従業員は、低い従業員に比べて、生産性が20%向上し、顧客満足度も10%向上するという結果が出ています。また、ウェルビーイングの高い従業員は、低い従業員に比べて、離職率が24%低いという結果も出ています。

エンゲージメント向上に食事改善が有効な理由

従業員のウェルビーイング向上施策として、運動や休暇制度の導入などが挙げられますが、食事改善も非常に有効な手段です。食事は、毎日の生活において欠かせないものであり、ウェルビーイングに大きな影響を与えます。

食事改善は、従業員の心身の健康を改善し、ストレスを軽減し、睡眠の質を向上させ、身体的なパフォーマンスを高める効果が期待できます。これらの効果は、従業員のエンゲージメント向上に大きく貢献します。具体的には、以下のような効果が期待できます。

  • ストレス軽減とメンタルヘルスの改善:バランスの良い食事は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、メンタルヘルスの改善に役立ちます。
  • 集中力と生産性の向上:栄養バランスの取れた食事は、脳の働きを活発化させ、集中力や記憶力を高めます。
  • 睡眠の質向上:適切な栄養摂取は、質の高い睡眠を促進し、疲労回復をサポートします。
  • 身体的健康の改善:健康的な食事は、生活習慣病のリスクを減らし、身体的なパフォーマンスを向上させます。
  • 活力と意欲の向上:栄養不足は、疲労感や倦怠感を招き、意欲の低下に繋がります。栄養バランスの取れた食事は、活力を与え、仕事への意欲を高めます。

これらの効果により、従業員はより積極的に仕事に取り組み、高いパフォーマンスを発揮し、組織への貢献意欲も高まります。結果として、従業員エンゲージメントの向上に繋がり、企業全体の業績向上にも貢献することが期待できます。

ウェルビーイングと食事の関係性

ウェルビーイングと食事の関係性をより深く理解するために、食事がウェルビーイングにどのような影響を与えるのかを詳しく見ていきましょう。

食事がウェルビーイングに与える影響

食事は、私たちの身体と心の状態に大きな影響を与えます。栄養バランスの取れた食事は、身体的健康だけでなく、メンタルヘルス、ストレスマネジメント、睡眠の質、そしてエネルギーレベルにも良い影響を与えます。逆に、偏った食生活や栄養不足は、様々な健康問題を引き起こし、ウェルビーイングを低下させる可能性があります。

その他、自炊とウェルビーイングの関係についても注目されています。工場のライン作業に従事する人に対する調査で、従業員のウェルビーイングを高めた要因の一つに「自炊をしている」が含まれました。自炊がウェルビーイングを高める要因になった理由は主に2つあると考えられています。

自炊がウェルビーイングを高めた理由①

工場のライン作業は、製品のごく一部を製作することが一般的で、自分の作業がどのような成果につながっているかを実感することが難しく、達成感を得にくい作業です。工場のライン作業に従事する人は、ウェルビーイングが低い傾向にあり、これは日々の仕事で、達成感や自分が会社や世の中へ貢献できているかを感じられないことがウェルビーイングを低下させる要因と考えられています。
一方で、自炊は、献立の作成〜食材の購入〜食材の下準備〜調理〜盛り付けと、計画から準備、完成まで全ての工程を自分で行うことになります。準備から料理が完成するまでの一連の流れ経験し、料理が完成するという達成感や満足感はウェルビーイングを高めることにつながります。

自炊がウェルビーイングを高めた理由②

また、自炊は買い物や調理、片付けなどが必要なため、時間がかかります。この時間がかかることが重要です。自炊をせず、惣菜やカップ麺などで食事を済ませると準備や片付けに時間を使わず数分〜数十分で食事の時間が終わります。人は時間が余ると、SNSを見たり、ゲームをしたり、ギャンブルをしたりと時間を浪費しがちです。さらに、ゲームやギャンブルによってお金も浪費することもあります。時間やお金の浪費はウェルビーイングを低下させる要因となります。自炊で時間を有効活用することで、時間とお金の浪費が減り、これがウェルビーイングへとつながります。

ウェルビーイングに関連する項目と食事関係

食事とメンタルヘルスの関係

食事は、脳の働きや神経伝達物質の合成に重要な役割を果たしています。特に、ビタミンB群、オメガ3脂肪酸、マグネシウムなどの栄養素は、メンタルヘルスの維持に不可欠です。これらの栄養素が不足すると、不安、抑うつ、イライラなどの症状が現れる可能性があります。

一方、バランスの良い食事は、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の生成を促進し、心の安定や幸福感に繋がります。また、腸内環境を整えることもメンタルヘルスに重要であり、腸内細菌のバランスが崩れると、不安やストレスを感じやすくなると言われています。

食事とストレスマネジメントの関係

ストレスを感じると、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは、エネルギー代謝や免疫反応に関与するホルモンですが、過剰に分泌されると、心身のバランスを崩し、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。

食事は、ストレスマネジメントにも重要な役割を果たします。ビタミンC、ビタミンB群、マグネシウムなどの栄養素は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、ストレスへの抵抗力を高める効果が期待できます。また、血糖値の急上昇を防ぐ食事もストレス軽減に効果的です。

食事と睡眠の質の関係

睡眠の質は、ウェルビーイングに大きな影響を与えます。睡眠不足は、集中力や記憶力の低下、イライラしやすくなる、免疫力の低下などの様々な問題を引き起こします。

食事は、睡眠の質にも関わっています。トリプトファン、マグネシウム、ビタミンB6などの栄養素は、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を促進し、質の高い睡眠をサポートします。また、カフェインやアルコールは、睡眠の質を低下させる可能性があるため、摂取量に注意が必要です。

ウェルビーイングを食事で向上させるための栄養素

ウェルビーイングを食事で向上させるためには、様々な栄養素をバランス良く摂取することが重要です。ここでは、特にウェルビーイングに効果的な栄養素について詳しく見ていきましょう。

栄養素ウェルビーイングへの効果含まれる食品
タンパク質筋肉や臓器の材料となり、エネルギー産生にも関与。活力や集中力の維持に役立ちます。肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品
ビタミンB群エネルギー代謝や神経伝達物質の生成に関与。ストレス軽減、メンタルヘルスのサポートに効果が期待できます。豚肉、レバー、納豆、玄米、アーモンド
マグネシウム神経伝達や筋肉の収縮に関与。リラックス効果、睡眠の質向上、ストレス軽減に役立ちます。ほうれん草、大豆製品、ナッツ類、バナナ
オメガ3脂肪酸脳細胞の構成成分であり、脳機能の改善や精神安定作用に効果が期待できます。青魚(サバ、イワシ、マグロなど)、亜麻仁油、エゴマ油

これらの栄養素をバランス良く摂取することで、心身の健康を維持し、ウェルビーイングを向上させる効果が期待できます。

具体的な食事改善策

従業員のウェルビーイング向上を促進するために、どのような食事改善策を導入すれば良いのでしょうか?ここでは、従業員エンゲージメント向上に繋がる具体的な食事改善策を紹介します。

従業員エンゲージメント向上のための食事改善ポイント

従業員エンゲージメント向上という観点から、食事改善のポイントを以下にまとめました。

  • バランスの良い食事を摂る:三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)とビタミン、ミネラルをバランス良く摂取することが重要です。様々な食材を組み合わせることで、栄養バランスの取れた食事を実現できます。
  • 野菜・果物を積極的に摂取する:野菜や果物には、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、免疫力向上や腸内環境改善に効果が期待できます。1日に350g以上の野菜を摂取することを目標にしましょう。
  • 加工食品や甘い飲み物の摂取を控える:加工食品や甘い飲み物には、糖分や脂質、添加物が多く含まれており、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの摂取量を減らし、自然な食材を積極的に摂取するように心がけましょう。
  • 水分を十分に摂る:水分不足は、疲労感や集中力低下、便秘などの原因になります。こまめな水分補給を心掛け、1日1.5リットルの水を目標に摂取しましょう。
  • 朝食を毎日食べる:朝食は、1日のエネルギー源となるだけでなく、脳の活性化や集中力向上にも効果があります。毎日欠かさず朝食を摂る習慣を身につけましょう。

これらのポイントを意識することで、従業員の心身の健康状態を改善し、ウェルビーイングを高めることができます。

食事改善を促進する社内施策

食事改善を推進するためには、従業員が積極的に健康的な食事を選択できる環境を整えることが重要です。以下のような社内施策を導入することで、食事改善を促進することができます。

施策説明期待される効果
社内食堂のメニュー改善健康的なメニューを導入したり、栄養バランスに配慮した献立を提供したりすることで、従業員が自然と健康的な食事を選択できる環境を提供します。健康的な食事の選択肢が増加し、従業員の食生活改善を促進します。
健康的なお弁当の提供栄養士監修のお弁当や、野菜中心のお弁当などを提供することで、従業員が手軽に健康的な食事を摂れるようにします。従業員が時間や手間をかけずに健康的な食事を摂取できる機会が増加します。
管理栄養士による食生活相談管理栄養士による食生活相談を実施したり、健康的な食事に関する情報を提供したりすることで、従業員が食事に関する知識を深めることができます。従業員の食生活に関する意識向上と、健康的な食事の選択を促します。
健康セミナーやワークショップの開催健康的な食事や栄養バランスに関するセミナーやワークショップを開催することで、従業員が食事改善の重要性を理解し、実践的な知識を習得できます。従業員の健康意識向上と、食事改善へのモチベーションを高めます。
社員向けのレシピ共有健康的なレシピを社内ポータルサイトや社内報で共有することで、従業員が簡単に健康的な食事を作れるようになります。従業員が自宅でも健康的な食事を継続する習慣を身につけます。

これらの施策を導入することで、従業員が健康的な食事を摂りやすく、継続しやすい環境が実現します。その結果、従業員のウェルビーイング向上に繋がり、エンゲージメント向上にも貢献することが期待できます。

食事改善導入のためのステップ

食事改善を効果的に導入するためには、計画的なステップを踏むことが重要です。ここでは、食事改善プログラム導入のためのステップを紹介します。

現状分析:従業員の食生活に関するアンケート調査

まずは、従業員の現在の食生活の実態を把握することが重要です。従業員向けのアンケート調査を実施し、以下のような項目について情報収集を行いましょう。

  • 普段の食事内容(朝食、昼食、夕食)
  • 外食・コンビニ利用頻度
  • 健康的な食事に関する意識
  • 食事改善への意欲
  • 健康に関する悩みや不安

アンケート結果を分析することで、従業員の食生活の実態を把握し、食事改善プログラムの設計に役立てることができます。

目標設定:具体的なウェルビーイング向上目標の策定

現状分析の結果に基づき、具体的なウェルビーイング向上目標を設定しましょう。目標設定は、食事改善プログラムの成功に不可欠です。例えば、以下のような目標を設定することができます。

  • 従業員の野菜摂取回数を増やす
  • 従業員の朝食摂取率を80%以上に上げる
  • 従業員のストレスレベルを10%低下させる
  • 従業員の睡眠の質を向上させる
  • 従業員の離職率を低下させる

目標は、SMART原則(Specific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-bound)に基づいて設定すると、より効果的に達成することができます。

計画立案:食事改善プログラムの設計

目標設定に基づき、具体的な食事改善プログラムを設計します。プログラムの内容は、従業員の食生活の実態やニーズに合わせて設計することが重要です。例えば、以下のようなプログラムを検討することができます。

  • 健康的なメニューの提供:社内食堂やオフィス近隣の提携レストランで、栄養バランスの取れたメニューを提供します。
  • 食生活相談:管理栄養士による個別相談やグループセミナーなどを実施し、食事に関する知識やスキルを向上させます。
  • レシピ共有:健康的なレシピを社内ポータルサイトや社内報で共有し、従業員が簡単に健康的な食事を作れるようにします。
  • 健康診断・検診の活用:健康診断の結果に基づき、食事改善の必要性や具体的なアドバイスを提供します。
  • 運動と食事の組み合わせ:運動と食事を組み合わせることで、より効果的にウェルビーイングを向上させることができます。
  • 従業員同士の交流促進:食事に関するイベントや交流会などを開催することで、従業員同士のコミュニケーションを促進し、食事改善へのモチベーションを高めます。

プログラム設計時には、従業員の意見を取り入れ、参加しやすいプログラムにすることが重要です。

実施:プログラムの導入と運用

計画に基づき、食事改善プログラムを導入します。導入前に、従業員に対してプログラムの内容や目的、期待される効果などを説明し、理解と協力を得ることが重要です。また、プログラムの運用方法を明確化し、従業員がスムーズに利用できるようにする必要があります。

例えば、社内食堂にカロリーなどの栄養成分表示を行ったり、健康的なメニューの選択肢を増やしたり、管理栄養士による個別相談を予約できるようにしたりするなど、従業員が食事改善に取り組みやすい環境を整えましょう。

評価:効果測定と改善

プログラムの実施後、効果を測定し、必要に応じて改善を行います。効果測定には、アンケート調査、健康診断の結果、従業員のパフォーマンス評価など、様々な指標を活用することができます。

例えば、食事改善プログラム導入後に、従業員の野菜摂取量が増加したか、ストレスレベルが低下したか、睡眠の質が向上したかなどを確認し、プログラムの効果を評価します。評価結果に基づき、プログラムの内容を改善したり、新たな施策を追加したりすることで、より効果的な食事改善プログラムを実現することができます。

まとめ|食事改善で従業員エンゲージメントとウェルビーイングを向上させよう!

本記事では、従業員エンゲージメント向上という観点から、ウェルビーイングと食事の関係性について解説し、具体的な食事改善策や導入ステップ、社内啓蒙方法などを紹介しました。食事改善は、従業員のウェルビーイング向上に大きく貢献し、ひいてはエンゲージメント向上、生産性向上、定着率向上といった効果が期待できます。

従業員のウェルビーイング向上のために食事に関する施策を始めたいと考える方は、ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、従業員にとって働きがいのある、そして健康的な職場環境を構築していきましょう。

従業員のウェルビーイング向上について、より深く知りたい方や、具体的な食事改善プログラムの導入について相談されたい方は、健康支援BonAppetitまでお気軽にご連絡ください。個別健康相談や管理栄養士による健康セミナー、メンタルヘルス研修、ストレスマネジメント研修などを実施しております。

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この記事を書いた人

植村瑠美

管理栄養士 健康科学修士
健康経営エキスパートアドバイザー

◆Profile◆
(株)健康支援BonAppetit 代表取締役
急性期総合病院で管理栄養士として10年間勤務し、生活習慣病患者を中心に5,000人の栄養指導を担当。現在は、多くの人が利用するコンビニ食や外食から始められる「食事の選び方」に着目した食事改善法をセミナー等で伝える。栄養素から伝える“理想的な食生活” ではなく、身近な食品から伝える  “超実践的な食生活”を伝えるセミナーが行動変容が起きやすいと好評。